「お面の呪い」

先は、静まり返った舎の中で一人、古びた本を手にしていた。
その舎は、かつて多くの人々が集い、賑わいを見せていた場所だが、今は誰も近寄ることはない。
先は、その曰くのある舎が気になり、友人から聞いた怖い話を思い出しながら、当時の姿を想像していた。

「ここにお面が奉納されていた」と友人から聞いた言葉が耳に残る。
そのお面は、訪れる者に不幸をもたらすという。
先は興味本位でそのお面を探し始めたが、果たして本当にそんなものが存在するのか、冷やかし気分だった。
彼女は普段から怖い話が好きなだけで、実際に遭遇するようなことはないと思っていたのだ。

舎の中は薄暗く、所々に埃が積もっている。
先は、懐中電灯を持って中を進む。
影が揺れるたびに、奇妙な感覚に襲われる。
何かが見ているような気がして、背筋が寒くなってくる。
同時に、その不安が彼女の好奇心を掻き立てていた。

すると、ふと視界の隅に何か光るものを見つけた。
近づいてみると、それは一枚の古びたお面だった。
先はその印を確認し、まさかと思いながらもそのお面を手に取る。
冷たい感触が彼女の肌に触れた瞬間、何かが彼女の心に巣食ったように感じた。

その日の夜、先は普段通り家に帰ったが、どこか心が落ち着かなくなっていた。
何かの影が彼女の後ろにあるように感じ、振り返るたびにそれは消えてしまう。
「気のせいだ」と自分を言い聞かせるものの、不安は募るばかりだった。
彼女は眠ることができず、目を閉じたまま思考を巡らせる。

その晩、夢にそのお面が現れた。
夢の中で、先は誰か人の形をしたものに追いかけられていた。
影が迫り、彼女は逃げるが、その影は一歩一歩近づいてくる。
恐怖で目を覚ますと、彼女はいつの間にか布団に包まれていた。
外は静まり返っており、何も心配は要らないはずだが、彼女の心には不安が消えない。

日が経つにつれ、先の身の回りで奇妙な現象が起こり始める。
友人といるとき、突然空気が重く感じたり、明るい場所でも影が視界に入ることが増えた。
友人たちは心配し、冗談半分に「お面のせいじゃない?」と笑うが、その時先はその冗談を笑えなかった。

ある晩、先は完全に孤独でいることに耐え切れず、再度舎に行くことを決心した。
懐中電灯を持って再訪すると、あの印があるお面の場所は既に空っぽになっていた。
しかし、何かが彼女の後ろにいるような気配は消えなかった。
恐怖が彼女を包み込み、彼女は足を交互に動かしながら、舎の中を探し続けた。

そこで最後に、ひっそりと隠された小部屋を見つけた。
ドアを開けると、そこには無数のお面が壁一面に飾られていた。
どのお面も異様に美しく、その一つ一つが彼女に語りかけているかのようだった。
先は思わず立ち尽くし、恐怖に圧倒されてしまった。

その場から動けなくなり、彼女はそのままお面の前で息を潜めてしまった。
しばらく経つと、空気が一変し、彼女の背後に温かい手の感触がした。
それは優しい手ではなく、ただ冷たく、無機質で、彼女に向かって何かを囁くような存在がいたのだ。

彼女はその瞬間、強烈な恐怖を感じ、全力で逃げ出した。
その日から、先は二度とその舎には近づかなかった。
しかし、あの印のお面とその感触は、彼女の心に深く刻まれ、いつかまた戻ってきてしまうのではないかと怯えながら、日々を過ごすのであった。

タイトルとURLをコピーしました